熊本県人吉・球磨の市民グループ:通称「手渡す会」

球磨川流域の豪雨とそれに伴う被害

 2020年7月4日の球磨川豪雨災害は、流域に甚大な被害をもたらしました。死者50名,行方不明者2名,住家被害は5144棟にのぼり、2023年2月末現在も619戸,1,341名が仮住まいを余儀なくされています。
 球磨川流域に災害をもたらした豪雨の特徴は,短時間に凄まじい勢いで降ったことにあります。7月平均降雨量は人吉で471.4mmです。わずか28時間ほどの間に,1ヶ月分超の雨が降ったことになります。これは、気候危機時代の雨の降り方の特徴でもありました。

 7月4日当日,既に被災していた流域にさらなる恐怖を抱かせたのは,市房ダム緊急放流の予告でした。朝6時半頃,2時間後に緊急放流を開始する旨が報じられました。人吉など中・下流域ではすでに氾濫し,家屋の上階や屋根に避難した人も少なくありませんでした。緊急放流は最終的に中止となりましたが,恐怖で戦慄を覚えたと語る被災者は少なくありませんでした。

●市房ダム緊急放流か!

8時半開始(6時半頃発表)
→1時間後に延期(7時半頃発表)
→放流見合わせ(8時45分頃)
→中止(10時半頃)

下流ではすでに氾濫、家屋の上階や屋根に避難していた人も!

(ウェザーニュースYouTubeチャンネルより)

 球磨川水系の流域各地の被害は,地形や人工構造物の影響を受けながら,様々なかたちで現れました。
 たとえば本流沿いでは,おびただしい量のヘドロや流木といった痕跡が街中に溢れました。国土強靭化計画の一環で水害防備林が伐採された市街地上流部の人吉市七地町の田畑には,表土が抉られ代わりにヘドロや流木やU字溝が流入しました。中流域の狭窄部では,支流や谷沢はほぼ全て崩れました。大半の家が流失した集落もあれば,家屋の前に林立した樹木により「荷物は7割くらい残った」ケースもあったと聞きます。高速道路や新幹線の橋脚やトンネル付近では激しい崩れが見受けられました。上流域においても,支流では護岸損壊などの被害が目立ちました。7.4球磨川豪雨災害は、文字通り,未曾有の豪雨災害でした。

多量のヘドロと流木が人吉市街地に流れ込み、被害を甚大化させた(撮影:手渡す会)

七地の田圃に残された鉄砲水の爪痕(手渡す会撮影)