熊本県人吉・球磨の市民グループ:通称「手渡す会」

ダム計画の問題点

 球磨川豪雨災害を受けて新たな河川整備計画が策定され、流水型川辺川ダムを柱とする治水対策が進んでいるが、被災者を含む地元住民や市民グループの間からは、豪雨災害検証が杜撰であり、必要な対策が実施されず、「川辺川ダムありき」で進められているという根強い不満と懸念、疑問の声がある。

球磨川豪雨災害の検証がずさん

 球磨川豪雨災害の検証は、豪雨災害から3ヶ月間にわずか2回の検証委員会で検証されたのみ。国交省、県知事、流域12市町村長により構成される委員会では、国交省にとって都合の良い検証データのみが示され、県や市町村長からはほとんど本質的な質問は出されなかった。

 テキスト

 テキスト

「概ねバックウォーターが原因」のウソ

 国交省は、水位計、カメラ映像、氾濫痕跡、数値解析により「バックウォーター現象が支配的」という説明を繰り返している。しかし、実際の氾濫は、バックウォーターよりも支流上流部からの越水や、橋げたが草木で閉塞してダム化したことなどが主たる要因である。

 実際に起きた事実を捻じ曲げてでも流域の氾濫の主たる要因がバックウォーター現象のためとするのは、国交省にとって、本流の水位を下げることで氾濫が防げることにしたいため。

 国交省にとっては、50名もの命がなぜ失われたのか、どうすれば命を守れるかの解明よりも、「川辺川ダムを作ること」が重要であり、優先事項である。

1.山田川の氾濫について

 国交省と熊本県は、住民証言として山田川河口の「山田川右岸出町橋付近」で6:10に越水が開始したとし、それ以降、上流へ向かって越水や内水氾濫が起きたとしている。証言者、証言内容詳細については、これまで明らかにしていない。

(第2回 令和2年7月球磨川豪雨検証委員会資料より)

 ところが、地元市民グループによる調査では、同日6:55時点で、出町橋付近では氾濫が発生していない写真が示されている。

 バックウォーターであれば下流側から氾濫するはずだが、実際には上流の方から氾濫をはじめて徐々に土地の低い方へと向かっていった。

 7月4日は、午前4時頃から万江川及び山江川の氾濫水が市街地に流入している。山田川では、午前6時26分より五十鈴橋付近から氾濫が起き、両岸の市街地へ流れ込んでいる。

(作成:清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会)

 また、五十鈴(いすず)橋には、上流から流れた草木がひっかかって欄干がダム化し流れを阻害し、氾濫したことが証言や写真から明らかになっている。

 さらに、犠牲者も出た紺屋町付近の監視カメラ映像では、球磨川と反対側、山田川左岸上流から勢いを伴った水が流れていることが記録されており、バックウォーターによる氾濫とは到底説明がつかない。

2.人吉市街地の氾濫について

 人吉市街地では20名の方が亡くなられている。

 手渡す会の写真や映像、証言、現地確認による詳細な調査では、御溝(おみぞ)、福川(ふくごう)と呼ばれる、万江川から引かれた用水路からの氾濫が大きな要因になっていることが分かった。氾濫水が、この御溝(用水路)や旧河道に集水して行き、急激な増水と激しい流れを作り出し、偶然にこのような場所にいた人が命を奪われることになった。

 しかし国交省は、それぞれの方が亡くなられた状況、その際の氾濫の様子について一切検証を行っておらず、氾濫の原因は「バックウォーター現象が支配的」として片付けている。

3.万江川の氾濫について

 御溝(おみぞ)川取り入れ口は、合流点から5km以上上流である。これは国交省がバックウォーター現象発生により上昇したと推測している氾濫地点よりはるかに上流で、時刻的にも合流点周辺の水位上昇より早くから氾濫している。バックウォーターでは説明できない。

 また万江川下流に近い下林町、下薩摩瀬町は、万江川からの福川(ふくごう)等からの水が流れ込み、午前6時には住民が避難しており、溺死者の検証調査結果でも裏付けられている。同様に、バックウォーターによる氾濫が支配的とは到底言えない。

人吉地点の危機管理型水位計データの問題

 国交省は、人吉大橋の危機管理型水位計で観測した最高水位は「T.P.107.78m(7/4 9:50)」であるとし、この数字が、球磨川豪雨災害のピーク流量、基本高水流量を始め、川辺川ダム計画につながる治水計画の根拠となっている。

1.「水害痕跡と合致」のウソ 

 この危機管理水位計の数値は、左岸側の洪水痕跡「107.46m」「107.94m」と危機管理型水位計の計測値が概ね合致しているとしているが、国交省が公開している河岸に近い左岸側の他の地点の痕跡数値、右岸側の洪水痕跡値ともにばらつきがあります

(国交省八代河川工事事務所HP「Q6-2」より

 また、大水の際には、直線に近いこの地点では川の中央付近の水位の方が両端よりも高く盛り上がる。当然ながら、氾濫する際には河川からあふれるので、川の方が氾濫した地域よりも水位は高くなる。その意味でも、川の中心に近い場所の水位が、両岸よりも低いとはありえず、当初より数値ありき、ダムありきの粗っぽい検証という印象をぬぐえない。

 「左岸側」の、わずか「2ヶ所の氾濫痕跡と合致」としているのは、危機管理水位計データに見合う数値を恣意的に選んだためとのそしりを免れない。「概ね一致」とは到底言えず、水位計で観測できたとするデータ自体の信頼性が疑われる。

(計測:球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会)

2.水位計水没により計測できなかった疑い

テキスト

住民参加手続きは形骸化

テキスト

「環境アセスで環境影響は最小化」は自作自演

テキスト

「流域治水」の言葉だけが先行し、中身は従来通りのダム治水   

テキスト