川辺川ダム事業について、県弁護士会・公害対策環境保全委員会(竹中敏彦委員長)は10月28日、環境への正しい評価と住民への情報を公開した上で事業を再評価すべきだとの意見書をまとめ、建設省や環境庁、県、流域自治体など関係機関に提出しました。
この意見書は「手渡す会」など地元のダム建設見直しを求めるNGOの依頼を受け、2年におよぶ現地調査などを元にまとめられたものです。五木村については「ダムに頼らぬ地域活性策を、全県民の知恵と経験を傾けて模索する時が来ている」と述べています。竹中委員長は、「調査を進めるなかで、建設省が主張している建設の目的で肯定できるものは何もなかった。ダムをつくること自体が目的になっている」と話しています。
建設省が「川辺川ダム計画を見直す」という名目で昨年設置した川辺川ダム事業審議委員会が8月10日に出した答申は、全国各地の審議委員会の答申と同様に「事業継続」でした。委員12名のうちの過半数が事業推進の立場を取る行政関係者であることからも、委員会設立当初からその結論は十分予想できるものでした。
建設省は、選挙で選ばれた住民の代表である知事に審議委員会の人選を依頼し、住民の意見を聞く場となるよう配慮したとしています。しかし、対象農家の約3分の1がダムからの水は不要として異議を唱え、850戸もの農家の方が裁判闘争まで起こしている川辺川利水事業。そして、人吉市の有権者の過半数を大きく上回る1万9千名の市民がダム計画の見直しを求める陳情署名をした事実は、委員構成にも、答申の内容にも全く反映されませんでした。
ダム事業審議委員会の問題点が明らかになるにつれて、県内の多くの自然保護団体がダム建設に対する懸念を表明し、「川辺川ダム建設中止」を申し入れた球磨川漁協の声も握り潰されてしまいました。
さらに、「治水」「利水」などにおけるダムの必要性の検討でも、行政側の主張をそのまま採用しており、住民側が指摘した問題点は黙殺されたと言っても過言ではありません。
非常に残念だったのが、福島知事が「30年経過し、大局的な判断が必要だった」と述べていることです。ダムの寿命は長くて100年。なぜ、社会情勢は激変しているのに30年も前の計画をそのまま継続させるのが大局的な判断なのでしょうか。
公共事業を、事業者自らが設置した機関で見直すこと自体が不可能です。住民投票制度など、住民の意思が直接反映できるシステムをつくるべき時がきているのではないでしょうか。
建設省が設置した川辺川ダム事業審議委員会が「ダム建設継続は妥当」との結論を建設省に答申してわずか2か月後の10月11日、ダム水没予定地の五木村と相良村は建設省と「ダム本体着工に伴う協定書」に調印しました。
30年にわたり、ダム問題による苦難を強いられた五木村当局は「ダム着工やむなし」との結論を選ばざるを得なかったとも言えるでしょうが、ダムにより被害をこうむるのは上流も下流も同じです。「ダムの受益者」とされている人吉市民や農家が多数反対していて、ダム建設の目的がなくなっているのですから、見直されるのが当然です。
また、この財政難のおり、目的のなくなったダム建設に巨額の国費を投入するのは、次の世代にも大きな負担を強いることになります。長良川河口堰も、本体着工してから全国的な問題としてクローズアップされるようになりました。最近、川辺川ダム問題も急速に各界・各層にも取り上げられるようになりました。私たちの活動は、これからが本番です。
8/7 「川辺川ダム事業審議委員会の廃止と川辺川ダム本体建設凍結
を求める要請書」を九地建に提出。(福岡市)
8/9 「森が歌う日魚が帰る」上映会。(人吉カルチャーパレス)
8/10 川辺川ダム事業審議委員会、「ダム建設継続は妥当」との結論
を建設省に答申。「ダム審解散要求書」を提出。(熊本市)
8/12~ (財)日本自然保護協会の保護部長・横山隆一氏、川辺川ダム
問題の現地調査。(人吉市~五木村)
8/16~ 小杉邦夫写真展「川が育むふるさと~川辺川の人と自然」
8/20 「美しい球磨川を守る市民の会」が八代で発足。
8/21 「川辺川ダム事業審議委員会の答申を無効とすることを求める
要請書」を九地建に提出。
8/25 「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」が熊本
市内で発足。
9/11 川辺川流域のクマタカの保護に向け、県に関係省庁への働き掛
けを要請。(熊本県庁)
9/14~ 「96国際ダムサミットin長良川」に参加。(三重県長島町)
9/23 「清流・川辺川を見に行こう」自然観察会。(相良村権現橋)
9/26 ダム建設の情報公開を九地建に要請。(福岡市)
10/11 五木村、相良村が県、建設省と川辺川ダム本体着工に同意。
10/26 熊本県保険医協会が「ダムと環境」をテーマにシンポジウム。
10/28 熊本県弁護士会が、川辺川ダム建設について「事業の再評価が
必要」との意見書をまとめる。
とき 11月25日(月)午後7時30分~
ところ くま川ハウス(人吉市新町)
なかみ ・経過報告 ・今後の活動方針について
・忘年会(会費1000円)
◇出欠確認のはがきや委任状など同封しなければならないところですが、正直な話、経費節減のため省略させていただきました。
収入の部 金額 備考
繰越金 153,962
年会費・カンパ 475,449 グッズの売上、雑収入等も含む
合計 629,411
支出の部 金額 備考
郵送費 92,845 会報発送、資料発送など
紙代 16,975 会報、チラシ、資料など
事務用品費 33,725 文具、印刷外注費など
事務所維持費 288,787 家賃、電気、電話、コピー機、印刷機、水道など
旅費 4,350 審議委員会への申し入れ高速道路代など
その他 2,000 県自然保護団体等協議会負担金など
合計 438,682
(収入) (支出)
629,411-438,682=190,729円
◇年会費 1,000円未納の方は、ご協力よろしくお願い致します。カンパも大歓迎です。カンパ・会費は、下記までお願い致します。郵便振替「01970-1-27826」 「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」
12月4日午後2時から、熊本地裁101号法廷で、866戸の農家らに訴えられた川辺川土地改良事業に関わる裁判の初公判が行われます。川辺川利水事業は、この裁判が結審しなければ計画決定も工事着工も、法律的にできません。その事はダム建設全体にも大きな影響を与えます。多数の傍聴参加をお願い致します。
日本のふるさとである五木村が、目的を失ったダム計画のために湖底に沈むということに強い疑問を抱き、また、川辺川が、完全に自然な川としては九州で唯一の清流であるということを県民及び国民の皆様に広く知ってもらいたい。という趣旨のもとに、子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会(代表・國徳恭代さん)が8月25日に熊本市で発足しました。
発足以来、関係諸機関への要請や話し合い、自然の中でのイベントなど多彩な活動を繰り広げておられます。これまでの「手渡す会」の活動とはひと味違った、例えばパソコン通信を使った広報活動やネットワーク造りを積極的に行っておられます。
今回、県民の会の会報を同封させていただきました。この会報も、すべてスタッフのパソコンを使っての手づくりだということです。今後のイベントなどにも奮ってご参加をお願いします!
8月20日の朝日新聞一面に、建設省がダム審にクマタカ営巣地の存在を報告していなかったことが大きく取り上げられました。その後、八代や熊本市内でダム計画を見直そうとするNGOが結成されたり、球磨川漁協がダム本体建設反対を表明したり、県内の多くの自然保護団体がダム建設に対する懸念を表明したり、弁護士会が意見書をまとめたり、保険医協会もダム問題を取り上げたりと、川辺川ダム建設に対する疑問の声は大きく広がりつつあります。継続は力なりですね。(N.O.)