これまで川辺川ダム反対を表明した、徳田正臣・相良村長、田中信孝・人吉市長、福島和敏・八代市長、蒲島郁夫・熊本県知事に続き、前原誠司・国土交通大臣が9月17日の就任会見で、川辺川ダム中止を表明しました。
また前原氏は9月26日、川辺川現地を視察し、未着工のダム本体工事の中止をあらためて明言した上で、公共事業の中止で影響を受ける住民らへの補償制度を創設する法案を来年の通常国会に提出する考えを明らかにしました。
流域の首長さんたちや県知事、そして新政権を動かしたのは、「川辺川ダムはいらない!」という流域住民や熊本県民の圧倒的な民意に他なりません。「ダムは水害をひきおこす」「ダムからの水はいらない」「清流を未来に!」と声を上げ続けた私たち流域住民の願いが、長い長い年月を経て、ようやく成就しようとしています。これまで長い間ご支援をいただいた会員・協力者の皆様方に、深く感謝いたします。
しかし、川辺川ダム事業計画を完全に廃止させるまで、闘いはまだまだ続きます。前原大臣が表明したのはダム本体工事の中止であり、生活関連事業は(ダム事業として)継続するとしています。川辺川ダム中止が法律的に決まったのではありません。五木村の振興や、ダムによらない球磨川流域の治水対策をすすめる必要もあります。ダム建設をあきらめていない国交省の官僚や地方議員も多く存在しています。課題は山積しています。
このような、今後の活動方針などについて話し合う「手渡す会」の総会を、来る12月5日(土)午後6時、くま川ハウスで開きます。忘年会もあわせて開きますので、ぜひご参加ください。
08.11.16 「自然の営みを重視した球磨川の治水を考える集い」を開催。
京都大学名誉教授の今本博健氏が講演。(人吉旅館70名参加)
11.22 「荒瀬ダム撤去を実現する県民大集会」(坂本村800名参加)
11.27 蒲島知事が荒瀬ダム存続を表明
09. 1.13 球磨川流域の「ダムによらない治水を検討する場」第1回会合。
3.26 同上第2回会合。熊本県がダムなしの複合治水対策を提案。
6. 8 同上第3回会合。
7.16 同上第4回会合。熊本県の複合治水対策を国交省が検証。
8.22 第13回川辺川現地調査。住民大集会に150名参加。
8.23 八代市長選挙で川辺川ダム反対の福島和敏氏が当選。
8.30 総選挙で、川辺川ダム建設中止を政権公約(マニフェスト)で
掲げていた民主党が圧勝。政権交代へ。熊本5区では川辺川ダム
反対の中島隆利氏(社民)が復活当選。
9.17 前原誠司・国土交通大臣が就任会見で、川辺川ダム中止を明言。
9.26 前原国交大臣が、川辺川現地を視察。
手渡す会の名誉会長として、長年、川辺川ダム建設反対の先頭に立たれていた地質学者の松本幡郎先生が7月8日、86歳で逝去されました。
松本先生は火山地質の研究の第一人者で、熊本大学では建設省からの依頼で、川辺川ダム予定地の地質の研究をされました。その結果、ダムサイト予定地の地質は非常にもろく、ダムを建設するには適さないとの報告書をまとめられました。
ところが建設省は、その報告書を完全に無視し、ダム建設を強引に進めました。昭和天皇に阿蘇山をご案内したという、保守王道におられた松本先生でしたが、理不尽な建設省への怒りはやまず、私達の運動の先頭に立たれていたのです。
上の写真は2000年11月、鳩山由紀夫氏に川辺川ダムサイト予定地の地質を説明する松本先生です。今日、その鳩山氏が首相となり、国交大臣のダム中止表明を一緒に喜び合いたかったという思いがこみ上げてきます。天に向かって生える青竹の如く、嘘を嫌い、思いのまままっすぐに生きられた松本先生。安らかにお眠りください。
昨年10月の蒲島郁夫知事と金子一義国土交通大臣(当時)の会談で設置が決まった「ダムによらない治水を検討する場」。球磨川流域12市町村も加わり、これまでに4回の会合が開かれました。
第1回の会合で、国交省は流域に過去最大の被害をもたらした昭和40年7月水害と同規模の雨が降った場合、あちこちで堤防が決壊し2万世帯以上も浸水するなど、現実とかけ離れた被害を前提としたシュミレーションで危機感をあおろうとしました。
その後、熊本県が提案したダム以外の治水策を実施した場合のシュミレーション結果を、第4回目で国交省が公表しました。それによると、大雨時の水位が現況より最大113センチ低下し、昭和40年7月と同規模の雨が降っても、ほとんどの堤防で、水位が堤防を超えることはありませんでした。
治水は河川管理者の責務です。国交省は自らダムなしの治水案を示すべきです。政権も交代しました。今後は、流域住民やダムなし治水を研究している専門家も「検討する場」に参加し、住民参加による治水計画の策定ができるようにすべきです。
│収入の部 │ 金額 │備考 │
│繰越金 │ ▲447,665│ │
│年会費・カンパ │ 932,078│グッズの売上、雑収入なども含む│
│松本幡郎先生ご遺族より│ 200,000│
│合計 │ 684,413│ │
│支出の部 │ 金額 │備考 │
│郵送費 │ 186,235│会報発送、資料発送 │
│交通費 │ 164,600│高速料金、ガソリン代など │
│事務用品費 │ 35,075│紙代、文具、印刷機インク代など│
│事務所維持費 │ 682,177│家賃、電気、電話など │
│その他 │ 54,826│会場費など │
│合計 │ 1,122,913│ │
(収入)684,413-(支出)1,122,913=▲438,500
◇「手渡す会」は、皆様方の年会費とご寄付のみで運営しております。年会費払 込用紙(一口1000円)を同封させていただきました。今後とも、清流を未来に 手渡す活動にご協力いただければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。
8月23日の八代市長選挙で、川辺川ダム反対・荒瀬ダム撤去の福島和敏氏が当選しました。また総選挙の熊本5区でも、中島隆利氏(社民)が復活当選しました。民主党政権もスタートし、「ダブル政権交代」で荒瀬ダムをめぐる状況は大きく変わりました。
荒瀬ダムは2002年、地元の要望を受け、当時の潮谷義子知事が撤去を表明。ダム撤去の全国初の試みとして注目されました。ところが、蒲島知事は昨年11月、財政難などを理由として荒瀬ダム存続に方向転換しました。
民主党の菅直人・代表代行は昨年7月、荒瀬ダムを視察し、「自然回復事業というかたちで、撤去費をある程度、負担するべきだと考えている」と発言。民主党県連も、国に補助制度創設を求めています。
荒瀬ダムの撤去は流域住民の長年の悲願であり、村や県議会でも議決されていた決定事項です。荒瀬ダムが建設されて50年以上、ダム湖周辺の住民は悪臭や放水時の振動、そしてダムによる水害被害に悩まされ続けてきました。川辺川ダムを完全中止し、荒瀬ダムを撤去し、球磨川の清流とアユの群れ、魚や貝が湧き出る八代海を取り戻しましょう。
住民の声を新政権と蒲島知事に届けるために、11月14日に県民大集会を開きます。皆様、是非お集まりください。
「手渡す会」は1993年の設立以来、川辺川ダム建設中止を求める多様な闘いと、多様な住民団体の要となり、活動を続けてきました。川辺川ダム事業審議委員会、川辺川利水裁判、住民討論集会、住民投票、球磨川漁協での闘い、収用委員会など、いくつもの大きな闘いを経てきました。川辺川ダムは「ムダな公共事業の典型」でしかない事実を住民に広く知ってもらう、様々な調査活動や集会なども継続してきました。◇そして現在、国交大臣も、熊本県も、多くの流域の首長も川辺川ダム反対を表明しました。「手渡す会」を結成した16年前を考えると、感慨深いものがあります。ここまで闘いを続けられたのも、皆様方のご支援と、圧倒的な民意があったからです。しかし、これでダムが止まったわけではありません。川辺川ダムが完全に廃止される日まで、今後とも手渡す会へのご協力をよろしくお願い致します。(N.O.)