川辺川ダム建設凍結へ向けてより広範な市民の理解を求め、協力をお願いするために、人吉市内において町内単位に集会を開催することを決め、その第1回目を去る1月25日、下青井町内会館において開催しました。下青井町は、球磨川辺りに位置し、過去何度となく川の氾濫による被害を被ってきた「水害常襲地域」ですが、今回集会に参加した下青井町住民の方からは「下青井は、以前から水害常襲地帯でした。しかし、市房ダムが完成した後のS40年大水害の時には、今までと比べものがないくらいの水が流れ込みました。結局、市房ダムから一気に放流されたためだと思います。その時、ダムにたまったヘドロも一緒に流し、水害後の後片付けの際ヘドロを取り除くのに苦労しました」という発言があり、ダムができることによりかえって水害の危険性が高くなるという指摘がなされました(集会の詳しい内容は2頁以降を御覧下さい)。
これからこのような地区集会を重ねながら、上記のような地域住民の証言を数多く集め、川辺川ダム建設推進派が唱える「ダム必要論」の根拠を突き崩して行かなければなりません。そして、より多くの人吉市民の皆さんに「ダムができたら大変なことになる」という認識を深めてもらわなければなりません。当面、下記の日程で地区集会を実施します。会員の皆さんの参加もお待ちしております。
★これからの地区集会の開催日程★
2月8日(火)19時~ 駒井田町地区集会(駒井田町会館)
12日(土)19時~ 紺屋町地区集会(紺屋町会館)
15日(火)19時~ 九日町地区集会(紺屋町会館)
※ビデオ上映「山は崩れる(四国・早明浦ダム)」及び球磨村、坂本村 の水害地域住民等から証言していただく予定です。
1月25日、人吉市内の町内会毎にダム建設の問題点を訴える地区集会を、下青井町から開始しました。事前に、下青井町及び近隣の町内への集会案内のチラシ配布、街宣カーによる宣伝、新聞広告による宣伝等行った結集、約30名の参加がありました。
最初に、今から1O年前にNHKテレビで放映された「山は崩れる~ある巨大ダムからの報告~」のビデオを上映。これは、四国・吉野川上流にS48年に建設された早明浦ダムが地域住民の生活を脅かすさまざまな問題を引き起こしているという内容で、その生々しい映像に参加者はテレビを食い入るように見つめていました。
ビデオではまず、大雨後のダム水位の急上昇、その後の水位低下によって引き起こされる「湛水(たんすい)地すべり」の映像を紹介。山腹の至る所で、大小合わせて1万ケ所の土砂崩壊が発生し、ダムが建設された大川村住民が毎日土砂崩壊の危険にさらされている姿により、「人間の計算をはるかに超えた自然のしっぺ返し」をまざまざと思い知らされました。また、「ダム湖へ土砂堆積」の急激な進行についてもふれ、建設後わずか10年にして堆積容量の30%も埋まってしまい、それを食い止めるためには155ヶ所の砂防ダム建設が必要という話に驚いてしまいました。さらには、治水も含めた多目的ダムとして建設されたはずなのに、建設後3年目の大雨の際、ダムを満水にして一気に放水したため「ダム直下の地域に大災害」をもたらした映像も紹介されました。
そして、ダム建設前に4000人いた大川村の人口は、建設後700人にまで激減し「急速な過疎化」が進んでいました。村の面積の94%を山林が占める大川村は、林業が主要な産業である訳ですが、過疎化の進行により林業労働者が減少し手入れもされぬまま放置された山林の増加により、「自然災害を大きくしている」ということでした。
この大川村の現状は、そのままダム建設後の五木村の将来を暗示しているようで、背筋が寒くなる思いがしました。ビデオでは紹介されませんでしたが、我が国屈指の清流と言われていた吉野川は、ダム建設後その様相を一変させます。台風が襲った後1年にもわたり「川の汚濁」が続き、鮎の漁獲量が激減し、「流域の観光業にも深刻な影響」を与えているということです。
ビデオ上映の後、池井会長より挨拶、重松事務局長より経過説明。会場には、宮崎県・一ツ瀬川の上流から下流の移り変わりを撮影しかパネル写真20点を展示し、「ダムができることにより川がどう変貌してしまうか」についてより認識を深められるようにしました。そして、一ツ瀬ダム下流の宮崎県西都市杉安町からはるばる来ていただいた、杉安町区長の池水正武さん(61)と公民館長の杉田英広さん(63)に、ダムによる自然環境と地域経済の変化について話していただきました。
九州電力が工事主体である「一ッ瀬ダム」は、S35年工事着工、S38年6月発電を開始(18万kw)。当時の杉安町は、旅館5軒、料理店、魚屋、遊船、ボート等もあり、貸切りバスや国鉄(妻線)納涼列車により多くの観先客が訪れ、キャンプ村もあった。一ッ瀬川下流のこの町にある杉安峡は「日向の嵐山」と呼ばれ、アユ等の川魚が豊富で屋形船や小型遊船が15、6隻あり、旅館や料理店は繁盛していた。
しかし、ダム完成後の一ッ瀬川と西都市は大きく変貌した。(1)澄み切った美しい川が濁り川に変貌、(2)バラス、砂がなくなる、(3)水温が下がり魚の成長が遅れる(現在は鮎は一匹もおらず)、(4)観光客の減少による過疎化が進行する、(5)旅館・商店が廃業・・・。そこで地元住民の取り組みとして、S40年9月 予期しない濁水に陳情を行う、S41年8月 九電社長に陳情(商店街は「ダムができるともうかる」と期待していたが、それが甘かったことを痛感し、さらに予想もしなかった濁水について陳情)、S46年9月 県知事に陳情、S49年3月 県議会に請願、S50年1月 知事に再度陳情、S50年2月 知事現地訪問、S53年1月 知事に再々陳情を繰り返した。
これに対して九電は、ようやくS49年7月に「選択取水装置」を設置する(ところがこの設備がいかに子供だましのものであったか)、そしてS50年3月 漁協、改良区、杉安商店会に補償、S60年12月 取水口にスクリーン(木の枝などを取り除くもの)設置、そして昨年、選択取水設備(取水口の高さ)の改造で15m→20mに。
現在の活動として、1市2町により結成された「公害対策連絡協議会」は年1回だけ九州電力と交渉(たった1回わずか2時間、九電としては2時間じっと我慢すればよいというもの)。昨年6月、「県立杉安峡自然公園(自然林550本が自生)」の整備の陳情、及び11月 汚濁被害ダムの調査として、「奈良県十津川」を市議5名、県議1名視察。この川は、洪水をよく起こす川で約100年前(明治22年)に十津川村民の半分が北海道に移住したという話で有名。
関西電力によって作られたこのダムは、汚濁解消のために「1週間かかってダムを干した」結果、短期間で清水になり効果があったとのこと。西都市議会の一般質問でも、「一ツ瀬ダムを干したら」ということが出され、「汚濁対策協議会」が設置されるようになった。県議会でも一般質問があり、十津川へ県担当職員(環境保険部長、環境保全課長)を視察のため派遣することになった。 ダム建設から30年たった今、依然として汚濁は解消されず(特に昨年の梅雨時期から半年以上も汚濁が続いている)、「魚のいない死に川」になっている。ダムができて何一ついいことがなかった。皆さんには一ツ瀬川の二の舞にならないように頑張っでほしい。
続いて、現在は農業をされている杉田さんより話していただいた。
一ツ瀬川下流の杉安町に住んでいる。杉安の川の石は、30年間の濁りのため真っ黒になった。だから魚もいない。ダムができたら絶対いいことはない。杉安の川の水は、川底が見えないほど茶色に濁り、水を採取して2~3日おくと何かがたくさん浮遊している。流れが速い瀬の石は、白くなければならないが真っ黒。川下から風が吹くと、水の臭いにおいが鼻につく。だから、川をのぞく人は誰もいない。
我々はダムができて30年間苦しんでいる。我々は水に親しむ権利があるはずなのに、それもままならない。夏休みの宿題の絵を書いていた子どもが、川の色を茶色に塗っていた。結局、子ども達は生まれたときから濁った川の色しか見ておらず、あの濁り水が本当の川の色だと思っている。昨年、水利権の更新があった(30年毎更新)。更新が終わり印鑑をもらった後は、ずっと濁り水が流されてきていまだに濁りはとれない。やり方が非常に汚い。
ダムができると水温が下がり、夏でもとても冷たくて川には入れない。その冷たい水をポンプアップして田へ水を引いているが、同じ時期に植えた稲でも10km下流の方が実がつくのは10日ぐらい早い(水路を通っている間に水温が上がるため)。畑地かんがいにはスプリンクラーを使用するが、冷たい水をかけることになるため、スプリンクラーを付けたものの使うことがない。川辺川ダムができれば、球磨川も一ツ瀬川と同じ濁り川になる。皆さんの力を合わせて、子孫のためにも一ツ瀬川の二の舞だけは踏まないでほしい。
1.問題とされている水源開発計画の見直しについて
(大臣)計画の見直しが必要。客観的に検討・評価して勧告する機関の設置が必要。なるべく早い機会に、検討の場づくりを行いたい。なお、現在工事進行中のものについては、見直しが完了するまでそれを凍結するということではない。
2.問題とされている水源開発計画に関する話し合いの保証
3.関連情報の公開の保証について
(大臣)地方建設局は与えられた仕事をどんどんやるところなので、(基本的問題には)対応しようがないのでは。建設省とじっくり話し合う機会を持つのが必要。今日は建設省の担当者(河川局開発課の坂本課長)も同席しているが、建設省本省(河川局)とよく話し合ってほしい。データは何でも公開というわけにはいかないだろうが、それについても話し合ってほしい。また、出先機関(地方建設局など)とも話し合ってほしい。
(大臣からの要望)地元の自治体から事業促進の要請が出ていると、建設省としてもその要請を無視するわけには行かない。地元自治体ともよく話し合ってほしい。
☆以上のような建設大臣の前向きな発言を得ました。この成果を元に、12月27日には同席していた坂本河川局開発課長に対し、川辺川ダムについて関連するデータの提供を申し入れたところ、データの公開・提供を基本的に認めた上で、すべての資料が本省にある訳ではないので川辺川工事事務所所長に指示しておく旨の回答を得ました。それを受けて、川辺川工事事務所に資料請求を求めましたが、担当者不在ということで一度は流れてしまいました。早急に会見を申し入れ、再度資料提供を求めたいと考えています。
「川辺川利水を考える会」(古川十市会長)が今回発足したことで、川辺川ダムの建設目的の一つである「利水(かんがい)」事業の是否を巡る論議をさらに過熱するものと期待しています。ダム建設に関連して事業が進められている「農水省国営川辺川総合土地改良事業」は、昭和58年に着工したが、かんがいの取水源のダム本体工事の遅れで、すでに10年以上が経過。その問、減反政策や後継者不足などで農業情勢は目まぐるしく変化し、当初申請していた計画内容の修正を余儀無くされています。
同会は、「農民の立場で利水問題に対する勉強会等を開催し、今後予定されている同事業の計画変更同意の手続きや利水事業全体の問題点を論議していこう」という主旨でスタートした訳でありますが、川辺川ダム建設推進派にとっては大きなウィークポイントであることは問違いありません。万一、川辺川ダム建設から「利水」の目的をはずすということになれば、ダム計画自体を根本的に見直さなければなりません。
同会では、九州管内で国営事業を実施しているところを訪れ、実際に農民の声を聞くための見学会を1月に実施(第1回目は都城市を訪問)。また、第1回目の事業対象農家を集めての「座談会」を実施し、相良村井沢、並木野地区を中心に50名ほど集まったとのこと。参加者からは、事業の推進に疑問を呈する意見が相次いだ模様。今後は、相良村に限らず他の町村にも呼びかけて組織を大きくしていくということで、おおいに今後の活動に期待しています。
人吉球磨の豊かな自然を愛する若い女性が、女性の視点で山や川のことについて考え、ひいては川辺川ダム問題についても考えようという意欲あふれる会が発足しました。私たち「郡市民の会」が投げかけた波紋は確実に広がりつつあることを実感します。今後、「映画とお話の夕べ」[3月19日(土):18時開場、18時30分開演、人吉カルチャーパレス小ホール〕や、白髪岳や市房、五木村での植林活動等、球磨川の上流と下流が手をつなげるようなネットワーク活動を展開していきたいということで、「やまんたろ・かわんたろの会」の精力的な活動により球磨川下流・八代市と中流・人吉市、そしてさらに上流の各町村との連携がますます深められることを期待するとともに、「郡市民の会」としても応援していきたいと思います。
3月19日(土)18時30分~
★長編記録映画「荒川」上映(88分)
ダムを誘致した山村を起点として、源流から東京湾までの水系169キロに及ぶ荒川の水路を辿りながら、現在的な川の様相と水問題を克明にルポルタージュしていく。私たちは、川をはじめとした自然にどう向き合っていくべきなのか・・・
★お話「山にこだわり川にこだわって」
話し手:中村益行さん(内大臣の自然を守る会、緑川の清流をとりもどす流域連絡会)
その1・・・署名活動にご協力をお願いします!
◎同封しました署名用紙1枚分で結構です。家族で埋められる分だけでもいい(子どももOK)ですので、御記入の上(氏名・住所はそれぞれ自筆で)大変お手数ですが、事務局(〒868人吉市北泉田町214 重松隆敏宅 電話0966-22-3917)までお送り下さい。
その2・・・一口1000円以上のカンパをお願いします!
◎前回会計報告しましたが、赤字財政という非常に厳しい台所事情であります。おまけに、郵便料金の値上げに伴いますます苦しい状況にあります。
◎同封の郵便振替用紙により、金額を御記入の上お送り下さい。
学習資料である「再考川辺川ダム」と「人吉市議会ダム調査・対策特別委員会報告集」も、一冊各々500円カンパでお願いしているところです。御必要な方は、事務局まで御連絡して下さい。
◆アースウィークくまもと(4.17~24)へ「郡市民の会」として参加
○期間中、熊本市下通り・上通りアーケードにて「ダム問題パネル写真」を展示する予定です!・・皆さん見にきて下さいね。
○アースウィーク協賛企画:「活き生きフェスタ」(4.17)に参加
熊本市秋津新町にある「秋津レークタウンクリニック」(原田正純院長)において毎年開催されている、[いのち]や[健康]について考えるさまざまな催し。今回、フェスタ事務局長の稲津さん(レークタウンクリニック勤務)より連絡を受け、今回は川をテーマにしたトークショーを企画したいということで、「郡市民 の会」にも協力の要請がありました。予定では・・・野田知佑さん(手渡す会会長)と、原田正純さんによるトークショーが開催される予定です!
▽川辺川ダム問題に取り組み始めてからというもの、川やダムに関係する書籍にやっぱり目がいく。最近読んだもので印象に残っているものと言えは、『川歌』という漫画(青柳裕介作)である。▽物語の舞台は、高知県東部の物部(もののべ)川上流の小さな山村である。ガラッバやら山の神さんやらが登場し、川で元気に遊ぶ子ども達や山や川などの自然と共に生きる人達の姿が生き生きと描かれている。▽『川は、川を用水路と履き違えた者達の手でコンクリートで固められていく。用水路と化した川では、もう子ども達の歓声も・・シバテン(ガラッパ)の川歌も聞かれない・・』この漫画の中に出てくる一文である。山、川、木、草など自然界のありとあらゆるものに対する〈敬愛〉の情に満ちあふれている作品です。是非、是非御一読を!▽ちなみに、『川歌』はビッグコミックス(小学館)より第1集~4集まで発売中(定価500円)。でも、人吉市内の書店ではなかなか見かけません。皆さんもおすすめの一冊がありましたら、是非お知らせ下さい。(S.A)
●会員の皆さんからの投書を受け付けます!・・川辺川に寄せる想いやダム問題についての御意見、これからの運動の進め方についての提案等、何でも結構です。下記のところまでお送りください。
〒868-03 熊本県球磨郡錦町西796 青木栄まで