農水省は、川辺川ダム建設による利水事業(国営川辺川総合土地改良事業)は不要として異議を申し立てていた1144戸もの農家の異議申し立てを3月29日に棄却しました。この利水事業の問題点をまとめると…
①この事業にかかる農家の負担金のうち、県営の分はいくらになるのか明らかにされていません。明らかにしないのは、その金額が高すぎて農家が事業に参加しなくなるのを農水省は恐れているからです。
②農家をだますような同意取得の例が、昨年3回開かれた口頭審理の席上でも多数、明らかにされています。
③現在農家が持っている水利権は、川辺川利水事業に参加させられた時点で取り上げられてしまいます。その事も農家は知らされていません。
以上のような理由で6月26日、農家など866戸が農水大臣を相手に「棄却取り消し」を求める行政訴訟を熊本地裁に起こしました。このような多数の農家の方々が国を相手に裁判を行うのは前代未聞の事です。
土地改良法によると、対象農家(4000戸)の1/3が事業への不参加を表明すれば、土地改良事業は中止となり、ダム建設は基本計画からやり直しとなり、ダム建設自体にも大きな影響を与えます。カンパや新聞への投書などでのご支援、よろしくお願いします。
昭和26年の発足以来、わが国の自然保護運動の理論的支柱をなして来た(財)日本自然保護協会の保護部長・横山隆一氏が8月13日、川辺川ダム問題の現地調査を行います。ダムによる水没予定地一帯には、絶滅危惧種のクマタカやヤイロチョウをはじめ、2711種もの貴重な動植物が分布しており、今後も引き続き同協会による本格的な調査が行われる予定であり、大きな反響を引き起こすことは必至です。
また、前夜にはくま川ハウスにて清流川辺川を生み出す脊梁山地の現状およびダム問題など、いかにしたら清流川辺川を守れるか、横山氏を囲み語り合います。多数のご参加をお願いします。(同封のチラシをご参照ください)
(財)日本自然保護協会とは… 昭和24年の尾瀬が原の水力発電計画、昭和26年阿寒国立公園雌阿寒岳頂上の硫黄採掘が問題になったのを機会に、全国的な自然保護運動の必要性が痛感され、任意団体として発足しました。その後、急速なわが国の経済発展に伴い、自然保護運動の緊要性が増したため、昭和35年、財団法人となり今日に至りました。(『自然保護ハンドブック』より一部引用)
川辺川ダムの治水計画について、民間の調査研究機関・国土問題研究会(志岐常正理事長)の上野鉄男氏(専門・河川工学)は、4月13日から3日間、ダムサイト予定地などの現地調査を行いました。
4月15日夜、くま川ハウスにて行われた説明会には、市民や市議ら約30人が参加。上野氏は川辺川ダムの洪水調節の根拠となるピーク流量の設定について「昭和40年の大水害の降雨量のみを使い、架空の地域別降雨パターンを設定して算出しているため過剰な値が出ている。過去のデータ全てを反映させるべきだ」と指摘。
さらに同氏は、ダムの洪水調節の難しさを実例を上げながら説明し「ダムは最後の手段とすべき。川辺川は遊水地や放水路などダムに頼らない総合的な治水事業が可能ではないか」などと述べました。
3/25 川辺川ダム事業審議委員会(以下略称『ダム審』)の第4回委員会。「治水専門委員会を設置して適切な計画高水流量の再設定と対案の組み合わせ計画の策定を求める要望書」を提出。
3/29 第15回日本環境会議「美しい自然を未来に」(熊本市にて開催)で、川辺川ダム問題が大きく取り上げられる。
3/29 農水省は、1144戸もの農家が川辺川ダムによる利水事業は不要として提出した「異議申し立て」の棄却を決定。
4/13 国土問題研究所(志岐常正会長)の上野鉄男氏が川辺川ダムサイト予定地などの調査に人吉入り。
4/27 ダム審の第5回委員会。「川辺川ダム事業審議に関する要望書」を提出。
6/2 ダム審の第6回委員会。環境に関する要望書を提出。
6/26 国営川辺川総合土地改良事業の「異議申し立て棄却」の取り消しを求めて、関係農家ら866人が農水大臣を相手取り、行政訴訟を熊本地裁に起こす。
6/30 ダム審の第7回委員会。実質審議に入ったと報道される。「これまでに提出しました『申し入れ書』『要望書』『資料』などの真摯な審議を求める要望書」を提出。
7/13 ダム審の第8回委員会。「抗議文」を提出。8月の審議委員会で答申案を決定すると報道される。
7/21 理学博士の松本幡郎氏、熊本生物研究所の甲守崇氏を球磨川ハウスにお迎えし、学習会。
30年も前に、国により一方的に立案発表され、現在その必要性が問われ、いまだダム本体工事には着手されていない川辺川ダム計画を中立・公正な立場で見直すという名目で、建設省は昨年「川辺川ダム事業審議委員会」を設置しました。審議委員会は川辺川ダム事業に対し『継続』『見直し』『中止』のいずれかの答申を出すことになっていますが…
①12名の委員を事業促進の立場をとる県知事が推薦しており、12名の委員のうち7名までが事業促進の立場を取る行政・議会関係者となっている。例えば人吉市では、約4万名の人吉市民のうち約1万9千名もの市民がダム見直しの陳情署名に応じたというのに、これでは地元住民の意志は全くダム事業に反映できない。
②地域住民の声を事業に反映するという趣旨とは裏腹に、度重なる住民の要望にも関わらず、住民の傍聴さえ認めていない。
③多数の地元農民が事業に反対して国相手に訴訟を起こした「国営川辺川総合土地改良事業」について、審議委員会の席上、農水省は「ダムによる方法が最適だ」などと説明し、江藤委員長は記者会見で「今後の審議は農水省が出した見解を前提として考えて進めていきたい」と語った。多数の農民の声も聞かず、現地調査もせずに、行政の一方的な見解だけを判断材料にしている。同様に、治水対策などについても、建設省の一方的な説明だけを判断材料にしている。
以上のような点を考えれば、審議委員会の答申を待つまでもなく、川辺川ダム事業審議委員会は、事業促進のお墨付きを与えるために建設省が設置したとしか言えません。審議委員会の答申後も、「目的がなくなったダム建設を見直し、子供達に豊かな自然を手渡そう」という私たちの運動に変わりはありません。
収入の部 金額 備考
繰越金 182,071
年会費・カンパ 1,102,154 グッズの売上、雑収入等も含む
合計 1,284,225
支出の部 金額 備考
郵送費 165,535 会報発送、資料発送など
紙代 38,224 ニュース、チラシ、資料など
事務用品費 20,998 封筒、文具、写真現像、印刷外注費など
事務所維持費 494,375 家賃、電気、電話、コピー機、印刷機、水道など
旅費 81,750 審議委員会への申し入れ高速道路代など、東京1名
調査費 193,881 国土問題研究所など、講師旅費宿泊費共
看板作成 132,000 取り付け費共
その他 3,500 県自然保護団体等協議会負担金、会場費など
合計 1,130,263
(収入) (支出)
1,284,225-1,130,263=153,962円
◆私たちの運動も、専門的な調査が必要な段階になりました。今回も皆様方のご協力により、黒字会計になりましたことに感謝致します。今後も調査による出費が予想されますので、カンパのご協力よろしくお願いします。
前号の会報「かわうそ」で募集しました「看板文句」へ多数のご応募、ありがとうございました。定例会での厳正なる審査の結果、人吉市のKさんの文句が選ばれました。応募された皆様には、近日中に粗品をお送りします。
今年に入り、手渡す会の活動の多くを「川辺川ダム事業審議委員会」への対応に費やしましたが、委員会のたびに八代や熊本市内から多くの方々が申し入れに加わっていただき、(仮称)『美しい川辺川を守る県民の会』も設立を迎えようとしています。昨年12月の週刊金曜日講演会から、清流とふる里を愛する人の輪が、大きく広がりました。夏は、川辺川の季節です。今年も川辺川の清流はエメラルドグリーンに輝き、皆様のお越しをお待ちしております。(N.O.)