川辺川の新利水計画策定で、3月に調整役の熊本県が水源を川辺川ダムとせず、川辺川ダム予定地の直下から直接取水する独自案を農水省に提示しました。
ところが、熊本県が独自の非ダム案を示したことについて、自民党や福永浩介・人吉市長らが猛反発し、事前協議は3ヶ月あまりにわたり中断してしまいました。
その後、6月には農水省が川辺川第2発電所(六藤)の発電用水を利用する「農水省新案」を提示。それを福永市長らはこぞって支持。しかしそれは、「ダム案に他ならない」と、今度は利水訴訟原告農家が反発しました。
7月14日の事前協議では、熊本県が「農水省新案」で一本化しようとしましたが、利水訴訟原告農家や相良村長は応じず、あやふやなまま事前協議はまたも中断しています。
そのような中、利水事業の最大の「受益地」とされていた相良村は、国営川辺川利水事業からの離脱を表明しました。矢上雅義・相良村長は事業離脱の理由として、将来農家に過大な負担をかけることや、過大な負担金で村財政が破綻することなどをあげています。水を待ち望む農家に対しては、既存水路の本格的な補修や改修を含めて村で努力していくとしています。
このように、身の丈にあった事業にしていかないと、結局は教育や福祉予算が削られるのは目に見えています。
農家にとって、そして住民にとって最もよい方策を客観的に判断すべきです。より早く、安く、確実に農家に水が届けられる方策が選択されることを望みます。
06. 3.17 相良村議会が、「川辺川水系の堤防改修と水質保全に関する意見書」を全会一致で採択。 3.27 「ダムによらない利水・治水を考える県議の会」の第2回学習会。(人吉市青井神社・200名参加) 3.29 手渡す会が福永浩介・人吉市長に「利水事業の事前協議への復帰」「河川整備基本方針検討小委員会の委員辞退」などの申し入れ。人吉市庁舎前で早朝ビラ配り。
4.13 球磨川水系の長期治水方針「河川整備基本方針」を策定する検討小委員会の第1回目の会合が、東京の国交省で開かれる。
4.30 手渡す会などによる流域の水害被災者への聞き取り調査が終了。ほとんどの世帯が川辺川ダム以外の治水対策を求めていることが判明。
5.10 第2回検討小委員会で、国交省が基本高水7000トンを提示。
5.29 川辺川利水で、農水省が既存発電水路から取水する新水源案を固める。
5.31 相良村の水害被災住民が、ダム以外の治水対策を県に要望。
6. 6 第3回検討小委員会で、国交省が森林の保水力議論を強引に打ち切る。
7.14 川辺川利水の事前協議で、熊本県が「農水省新案」で一本化しようとするが、利水訴訟原告農家や相良村長は応じず。
7.31 相良村が国営川辺川利水事業からの離脱を正式に表明。
8.26 第10回清流・川辺川現地調査、はじめて五木村で全体集会。(五木村林業センター、250名参加)
9. 6 第6回検討小委員会で国交省が、現行の治水計画と同じ基本高水7000トンを強引に決める。 9.22 相良村議会で、川辺川利水事業組合からの村の脱退を求める意見書を可決。
7月22日の集中豪雨で、鹿児島県の鶴田ダムが満水状態になる可能性が高まったため、異常洪水時の操作を実施し、下流の水位は一気に上昇しました。手渡す会のスタッフが現地調査したところ、ダム直下の道路も異常放流のため、大きく崩れてえぐれていました。
鶴田ダムは、これまで3回水害調節不能に陥っています。過去には被災住民による、鶴田ダムを原因とする水害訴訟も起されています。
国土交通省の収用裁決申請の取り下げで、川辺川ダム事業計画が白紙化している中、球磨川流域の長期治水方針などを協議する検討小委員会が4月から開かれています。
ところが、小委員会のメンバーの大半は球磨川流域とは全くなじみの無い学識経験者などで占められ、国交省の見解を追認するだけです。住民は直接意見を言う機会さえもありません。また、毎回住民からは多くの意見書や要望書などが提出されましたが、それらを真摯に検討しようとする姿勢も見られませんでした。
9月6日の第6回委員会では、基本方針の根幹となる人吉地点の基本高水流量を現行と同じ毎秒7000トンに決めました。国交省の強引な進め方に対し、潮谷義子・熊本県知事は不満をあらわにしました。
住民を締め出す、このようなやり方は、明らかに時代に逆行するものです。これでは科学的で客観的な検証は期待できず、住民の納得も得られるはずがありません。
球磨川では、2001年12月から事業者(国交省)と住民が同じテーブルにつき、熊本県がコーディネートして事業の是非を議論する「川辺川ダムを考える住民討論集会」が開催されてきました。この実績を活かし、国土交通省は「住民参加」を理念とする新河川法の精神を尊重し、住民参加で川づくりを進めるべきです。
│収入の部 │ 金額 │備考 │
│繰越金 │ 65,948│ │
│年会費・カンパ │ 962,283│グッズの売上、雑収入なども含む│
│合計 │ 1,028,231│
│支出の部 │ 金額 │備考 │
│郵送費 │ 211,775│会報発送、資料発送 │
│交通費 │ 348,298│東京行動(小委員会)、高速代など│
│事務用品費 │ 33,735│紙代、文具など │
│事務所維持費 │ 415,725│家賃、電気、電話など │
│その他 │ 82,030│治水ブックレット50冊ほか │
│合計 │ 1,091,563│ │
(収入)1,028,231-(支出)1,091,563=▲63,332
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国交省は、昨年の台風14号での水害状況を例に挙げて「110戸に余る家屋の浸水被害があったので川辺川ダムが必要だ」(佐藤信秋事務次官)と主張しています。
ところが、手渡す会が4月までに実施した聞き取り調査によると、昨年9月の台風14号で家屋に浸水被害を受けた川辺川、球磨川流域の世帯の大半が、宅地のかさ上げや河床の土砂撤去など、川辺川ダム以外の治水対策を求めていることが明らかになりました。ダムについては「ダムの放水で河川が一気に増水する恐れがある」などと反対が相次ぎ、建設を求める意見はほとんどなかったことも報道されています。
昨年の台風14号で、川辺川のはんらんにより大きな被害を受けた相良村永江地区の水害被災住民は5月31日、矢上雅義村長とともに県庁を訪れ、ダムによらない治水対策の早急な実施を求める要請書を提出しました。要請書は、同村永江地区の住民一同名義で、北側一雄・国土交通大臣と潮谷義子知事あて。発起人の緒方正明さんが、同地区全70世帯の住民ら254人の署名と併せて、出張中の潮谷知事の代理の冨田耕司・県土木部次長に手渡しました。
住民らは「水害で地域は疲弊している。ダムは何年先になるかわからない。1日も早く川底のしゅんせつや堤防のかさ上げを」と訴えました。
1993年8月に「手渡す会」を設立し、川辺川ダム建設中止を求める闘いをはじめて13年もの年月がたちました。その間、94年7月と99年9月に、水源連(水源開発問題全国連絡会)との共催による全国集会を開きました。94年7月30日の全国集会では、人吉カルチャーパレスに1000人以上が集まった熱気を、昨日のことのように思い出します。当時の状況を考えると、本当によくここまで来たものだと驚きさえ感じます。◇来たる10月28日に、3度目の全国集会を開きます。川辺川ダム建設を完全に中止させるために、数々のダム計画を中止させた韓国からゲストをお招きし、「美しい日本に川辺川ダムはいらない」と題して行います。安倍新首相に私達の声が届きますよう、皆様方のご参加をお待ちしています。(N.O.)