2009年1月に始まった国・県・地元自治体による「ダムによらない治水を検討する場」は、迷走を続けています。「川辺川ダムは本当に止まるのですか」という質問もしばしば耳にします。その主な理由は、国土交通省が2005年に策定した、川辺川ダム建設を前提とした球磨川流域の治水対策(河川整備基本方針)を大前提とする姿勢をいまも持ち続けているからです。
国土交通省は、清流を維持する上で欠かせない川辺川の自然の護岸をコンクリートづけにしてしまう案を持ち出したり、市房ダムの再開発を持ち出したりしています。また、人吉地区の川の現況を無視し、川辺川ダムを建設するために想定した安全度で、人吉地区が安全か安全でないかというような議論も行われています。国土交通省は昨年12月21日、川辺川ダム代替案を本年度中に取りまとめる方針を示しましたが、このような無謀な治水案が実現されたら大変です。
手渡す会は「検討する場」に毎回参加し、毎週月曜日の定例会で議論を重ねています。この議論をもとに、「ダムによる治水」から「ダムによらない治水」へ、180度の転換を強く求めたパンフレットを作成しました。
「ダムによらない治水」は、蒲島知事が2008年9月に表明した「守るべき宝は球磨川」を大前提としたものでなくてはなりません。真の「ダムによらない治水の検討」を実現させるため、流域の市町村や県に理解を求めていく必要があります。手渡す会は当面、この課題に取り組みます。
11. 8.27 第15回川辺川現地調査。28日のシンポジウムに和田拓也五木村
長ら参加(五木村林業センター180名参加)。
9.10 手渡す会・納涼会(中川原30名参加)
9.28 球磨川漁協、瀬戸石ダム水利権更新に不同意の決議文を電源開
発に提出。
11.21 熊本県公共事業再評価監視委員会が五木ダム中止を「妥当」と答申。
12. 3 連続シンポジウム「川辺川ダムはなぜ止まらないのか」
今本博健氏(京都大学名誉教授)ら講演(熊本市40名参加)
12.20 蒲島郁夫知事、県営五木ダム事業中止を正式表明。
12.21 国交省、川辺川ダム代替案を本年度中に取りまとめる方針を明示。
12.27 五木村が実質上のダムなし再建計画(200億円)を公表。
12. 1.19 川辺川利水事業、農水省新案は「不可能」と事業組合が認識。
1.20 ダム事業中止に伴う「生活再建法案」3月閣議決定。
国が中止を表明した川辺川ダム計画の水没予定地を抱える五木村は、昨年12月27日、国や県との合意に基づく村再建計画の概要を公表しました。2009年の川辺川ダム中止表明から2年を経て、五木村の再建策が具体化したことになります。
概要によると、計画期間は2012年度から2018年度までの7年間。道路整備などハード面の40事業を見込んでいます。事業費は約200億円で、初年度は約35億円。財源には国の交付金などを活用するほか、熊本県が50億円を拠出します。
かつての村中心部で住民の移転に伴い更地化した川辺川沿いの水没予定地については、川沿いでキャンプなどを楽しめる親水広場や特産のソバを栽培する観光農園、多目的広場を整備するとしています。水没予定地に施設を整備するということは、実質上ダムなしの再建計画といえます。
年が明け、1月20日に国土交通省は、五木村をモデルに、ダム事業中止に伴う地元の生活再建を支援する「ダム事業廃止特定地域振興特別措置法案(仮称)」について3月上旬に閣議決定し、内閣法として通常国会への提出を目指す方針を明らかにしました。いよいよダムなしの五木村の再建計画が現実のものになろうとしています。
休止中の国営川辺川利水事業で、人吉球磨の6市町村でつくる事業組合は1月19日、農水省新案による利水事業の実施は不可能との認識を示しました。
川辺川ダムを水源として1984年に計画策定された同事業は、農家からの同意取得に違法性があったとする福岡高裁判決の確定で2003年に頓挫。その後、「ダムに依存しない利水事業」として策定された農水省新案も、川辺川から水を引く相良村土地改良区の農家などの反対により頓挫したのです。
この「農水省新案」は実質上のダム案であり、農家に負担を押し付けるものです。地元が求めている「利水事業」は、膨大な税金を投入し、農家の負担を強いる大規模な事業ではありません。地元農家は、既存水利施設の補修などによる「身の丈に合った利水事業」を求めているのです。
│収入の部 │ 金額 │備考
│繰越金 │ ▲448,959│
│年会費・カンパ│ 1,071,542│グッズの売上、雑収入なども含む
│合計│ 622,583│
│支出の部 │金額│備考
│郵送費 │ 220,730│会報発送、資料発送
│交通費 │ 83,600│高速料金、ガソリン代など
│事務用品費│ 19,042│紙代、文具、印刷機インク代など
│事務所維持費│ 906,208│家賃、電気、電話など
│その他 │ 50,021│会場費など
│合計 │ 1,279,601│
(収入)622,583-(支出)1,279,601=▲657,018
◇「手渡す会」は、皆様方の年会費とご寄付のみで運営しております。年会費払 込用紙(一口1000円)を同封させていただきました。今後とも、清流を未来に 手渡す活動にご協力いただければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。
私たち「手渡す会」はこれまで、ダムによらない球磨川流域の治水対策、ダムによらない身の丈にあった利水事業、そしてダム問題に翻弄されてきた五木・相良両村の再生を求めてきました。
昨年、私たちの闘いは大きく前進しました。昨年12月、熊本県は五木ダム建設中止を正式に表明しました。荒瀬ダムでは、今年からいよいよ全国初のダム撤去工事が始まります。水利権更新を2014年に迎える瀬戸石ダムでは、ダム撤去に向け、漁民をはじめとする住民の闘いが始まっています。
しかし一方で、熊本県内では、阿蘇の玄関口につくられようとしている立野ダムや、天草の路木ダムが、計画・建設中です。全国各地でも住民の反対をよそに、ダム建設は推し進められています。また、八ッ場ダムの建設再開に見られるように、民主党政権は「コンクリートから人へ」に象徴される政権公約自体を放棄してしまいました。もはや政権党であってもダム建設を中止することはできないということが明らかになったのです。
球磨川流域で川辺川ダム中止、荒瀬ダム撤去、そして五木ダム中止を勝ち取れた理由は、ひとえにダムを望まない住民がそこに生活し、ダムを無くすために立ち上がったからです。川を守り未来を切り開くことが出来るのは、清流を愛する私たち住民の心と行動だけなのです。
2012年はダムを推進・復活させようとする勢力との全面対決が予想されます。これからも清流球磨川・川辺川を未来に手渡すために、「手渡す会」の活動にご協力をお願いします。
1993年8月に「手渡す会」を創設して早20年。私たちの活動の拠点となってきた「くま川ハウス」を南泉田町に移転することにしました。中川原にあった初代ハウス(1994年~99年9月)、九日町札辻の2代目ハウス(99年10月~現在)に続く、3代目の「くま川ハウス」です。毎週月曜夜の定例会も20年近く続けられてきました。忘年会ほかいろいろなイベントや流域合同会議なども開催されてきた、思い出のハウスです。◇3代目のハウスは、家賃もこれまでより大幅に安くでき、外山胃腸病院の駐車場も無償で提供していただけるという好条件です。4月16日(月)午後6時より、3代目くま川ハウス・オープニングイベントを開きます。これまでのハウス同様、たくさんの人が集い、清流を未来に手渡す人の輪が広がればいいなと思います。(N.O.)