熊本県人吉・球磨の市民グループ:通称「手渡す会」

人吉市災害公営住宅(東校区地区)のこと①

久しぶりの投稿です。
人吉市大工町・九日町での建設が計画されている災害公営住宅をめぐり、大きな問題が起きています。
一見手順を踏んだように見せかけて、実質的にはクローズで建設地と事業者が決まりました。しかも、その土地と事業者は、県議の親族に所縁あるものばかり。鉄筋コンクリート造り5階建て、計45戸、事業費は18億円。原資はもちろん税金です。

大工町、九日町は人吉市の中心市街地で、2020年7月4日の豪雨災害で浸水しました。被災した方を中心に、浸水地域に災害公営住宅を建設すること、5階建てで周囲の日照を遮る建物が(事前の説明も合意形成の努力もないまま)ドドンと建つことへの疑問の声が、上がっています。

実はこの件、3月頃から地元では問題になっていました。大きな事業が実質クローズ状態(市のHPにちらっと公開するのみ)で、ごく一部の人間で決めてしまったことから、人吉市の宅建協会は市に抗議をしていました。実質クローズ状態ながら選定に携わって講評しておられるのは選定委員の3名。熊本大教員、副市長、熊本県建築住宅局長です。
https://www.city.hitoyoshi.lg.jp/toppage/gousaigai/gou_saiken/38431

市議からも問題視する声が上がりました。重要な案件ながら市議会で議論を行うことなく実質クローズで勝手に決めたことから、全員協議会の開催を要求。4月12日に開かれた際の議員の発言の一部が、熊日0413「市政記者席」に掲載されています(web記事なし)。
この問題にいち早く取り組んだのは「災害公営住宅建設反対の会」(反対の会)。70・80・90代の女性から成る、被災者団体です。
反対の会によれば、疑問に思い説明を求めたところたらいまわしにされた挙句、3日前になって「5月11日に説明会をする」と事業者から案内が届きました。
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=pfbid02SaM8myDcig4pXme8msMDQ3ZDvaEDgHcAo8Pq4ZpTufWvE6ntG17g7m5qmNhiQxC7l&id=100092875794179

5月11日の説明会の様子は5月15日の人吉新聞に掲載されました(web記事なし紙面のみ)。その見出しには「災害公営住宅に反発」「中心市街近隣の住民 説明会で理解得られず」「反対や不安の声相次ぐ」と並び、次のように書かれています。
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整備業者の近隣住民への個別訪問による説明は今月上旬からあっていた。
住民の要望を受け、11日に初めての近隣住民を対象にした説明会が急きょ開かれ、約30人が出席。設計、施工、不動産の整備業者、市役所住宅政策課から説明を受けた。
出席者からは「新聞で知って驚いた」「話し合いと言いながら、内々では決まっている感じ」「住居を失った被災者のために我慢していたが、住民の気持ちを無視している」「反対したら中止になるのか」「目の前に15㍍の壁が出来るのと同じ」「城下町に似合わない」と反対意見をはじめ、日当たりや電波障害、プライバシーなど建設によるトラブルを不安視する声も多く出された。
同課の職員は相次ぐ反対意見を受け、「ここが駄目だというなら代案をいただきたい」と求める場面も。「住民に代案を押し付けるな」「他の候補地は」「次点の事業所では駄目なのか」などと反発が強まった。
落選した他の提案者について、同課の職員は「確かに広い土地で柔軟に建物が建てられるが、接道の問題があった。広くて良い土地でも道路に接していなければ建てられない。新しく道路を造ると提案されたが、工期におそらく間に合わない」と説明。これに対しても「建設や工期ありき」と出された。
<後略>
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反対の会は5月17日に要望書を提出。町内会でも話題となり、市民からの突き上げを受けた人吉市は5月30日、市民すべてを対象とした説明会を開催します。
5月30日14時と19時の2回にわたって開かれた説明会には、延べ90名ほどの市民が参加しました。人吉新聞がweb記事に公開している通り、当日は
「水害リスクがない安全な場所に建設するべき」「観光地の魅力がなくなってしまう」「入居希望者がここを望んでいるのか」「住民と改めて話すために見直し、白紙撤回を」「夜中まで賑わないといけない商業地になぜ」「まちづくりと一緒にするのがおかしい」「事業費が1戸当たり4,000万円はぜいたくでは」「空き屋、公営住宅のリフォームでも対応できる」「入居者は災害時に車をどうするのか」
といった声が挙がりました。
https://hitoyoshi-sharepla.com/news.php?news=6213

そして反対の会が中心となって、被災者の生活再建は十分に理解するとしたうえで、「逃げなくてもよい防災を」「災害公営住宅にふさわしい非浸水地域の適地での建設を」求めて、署名活動を展開するに至っています。
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=pfbid0XC2G4hLHkBPaM6DoQF7Dyo13VsDRYjnBPeeNuAmA4st8196wAGKUbF4h1gfc6fpPl&id=100092875794179

この災害公営住宅建設を巡っては、透明性、客観性、合理性、公正性の面で問題があります。
国交省が作成した「公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドライン」には、「公共事業の計画に関して国民の理解を得るためには、計画自体が適切であることはもちろんのこと計画策定プロセスに対して透明性、客観性、合理性、公正性が確保されていることが重要である」と明記されています。
今回のケースは計画の適切さの問題にくわえ、市議も市の宅建協会も周辺住民すら知らされることのないまま、ごく一部の内々で進められました。
県議の親戚と所縁ある土地や業者を、事業者としてふさわしい、と学者・県職員・副市長がお墨付きを与えてまで。

風の噂では、この件に携わる市職のうち良心を持つ方複数名が、体調を崩されています。市民の理解を得られない、職員の中には体調を崩す者も複数生じている。市内外からこの問題に関する情報開示請求をかけているのに(中には4月半ばにかけた者も)未だ開示されない。行政が掲げる「創造的復興」とはほど遠い(=利権まみれで合意形成を軽視、どころか市民の分断を促す)形で、事業が進められています。

そもそも、被災したことの大変さを、地域に住まう被災者やごく近くで生活している支援者の大半が、実感/共有しています。そんな中では、助け合ったり気遣ったりするのは人情だし、いわば当然のこと。そうした、地域社会の人びとの心情を踏みにじるような事業の選定かつ進め方を、市も県も政治家も学者までもが乗っかっています(6月のNHK100分de名著『ショック・ドクトリン』の事例を見るかのよう…怒)。
将来世代に手渡したいと思うようなまちづくり・かわづくりを志向する被災者・市民の立場からすれば、「恥を知れ」としか言いようがありません。

説明会資料によれば、6月末には土地の売買契約、8月上旬には建物の売買契約+工事着手、とあります。来年7月5日には工事完了予定、とも。
人吉市は、市民社会からの訴えを無視し続けるのか。県はそれを後押しするのか。
多くの方にも注視していただけると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。