今年3月末に報じられて、いつの間にか決まっていることが明らかになったこの事業。人吉市宅建協会からの抗議、市議会全員協議会の開催、周辺住民による建設反対運動等々を経て、事業者選定プロセスの不透明さが明らかになってきました。
市民の声に押されるかたちで5月半ば頃に初めて事業者による説明会が、5月末には市による説明会がなされました。多くの市民が参加し、抗議の声が相次ぎ紛糾したのは報道の通りです。
その後、反対運動による申入れや市議会でのやり取りを経て、不透明さのみならず、公正性・妥当性・合理性の面でも多大な問題を孕んでいることが明らかになってきました。たとえば、
・災害公営住宅であるにもかかわらず、2020年7月豪雨災害時に1.5m浸水かつハザードマップで5m以上浸水リスクのあるところに立地。しかし選定委員からは高評価
・公示地価よりはるかに高い坪単価が設定され、土地代と建設費とで20億円規模の予算。他の災害公営住宅と比しても1戸当たりの価格が2倍ほど高い
・選定委員は、人吉市まちづくり(復興や都市計画)の複数の審議会で委員を務める大学教員と、人吉市副市長と、熊本県土木部建築住宅局長の3名。プロポーザル方式のプロセスは非公開、選定委員の講評は出されても資料や各委員の採点の詳細も非公開
・選定委員は3名とも現地を訪れていないのに、「コミュニティへの配慮」の項目に全員が満点をつけている
・他の候補地に関する市職員が行った町内会長や地区長への聞き取り内容が、市長に適切(=地区長や町内会長が話した文言通り)に伝えられていない。
例:地区長「別の計画がある」 → 復興部長から市長へ伝わる際「当該地区では反対運動がある」
・建設される土地と選定事業者の企業はみな、地元選出県議の親族と所縁があるとのころばかり
・反対運動をしている方のお宅に、その県議がものすごい剣幕で怒鳴り込んできた。後日、県議に近しい市民(後援者ら?親族??)も反対運動を収めるように言いに来た
・市議会では反対の陳情を、議長らの会派を中心となって否決した(=当該会派から出ている委員は委員会では議論を喚起する振る舞いをしなかった。にもかかわらず、本会議で「審議不十分」を誇張し否決。なぜご自分たち自ら委員会で提起しなかったの???)
・大雨を理由に延期された7/3説明会の代替日を、反対運動の代表と相談している最中に、代表が都合がつかないと言っていた7/8に設定し交渉中に防災無線で放送した
・7/8に行けないので資料を事前にほしい、メッセージをビデオ撮影したいと市役所に赴いた反対運動の代表=被災者に対し、待たせた挙句に資料を渡さずメッセージの撮影にも応じなかった
・市役所はこの事業を進めるために、どのような意見があったかをブラックボックスにできてしまう現状に何も言及することなく、7/10から300軒の個別訪問を行おうとしている(その後、(意図的?)全ては回らなかった)
…と、書ききれないほど問題があるにもかかわらず、事業を推し進めようとしています。
市はこれ以上、被災者間の分断を促すような事業を強引に進めるべきではありません。「被災者のために」と言いますが、行なうべきは全ての被災者のためになることであって、ご自分たちのやりたいことに合致する困難を抱えている被災者のみに利するような公共事業を、すべきではありません。県もそうしたことを後押しすることはもうやめてください。