熊本県人吉・球磨の市民グループ:通称「手渡す会」

会報「かわうそ」10号

1995年06月27日発行
清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会 会長 池井 良暢

日本弁護士連合会が、川辺川ダム問題の現地調査を開始!

 日本弁護士連合会の公害対策環境保全委員会(寺田武彦委員長)は、川辺川ダム建設や国営川辺川総合土地改良事業について、6月10日から3日間にわたり現地調査を行いました。
 私たち「手渡す会」ほか、川辺川ダム建設見直しを訴える7つの民間団体は、昨年11月に日弁連と県弁護士会に対し、「川辺川ダム建設は五木村の水没のほか、下流域住民にも大きな影響がある。環境アセスメントもなく強行されようとしている。土地改良事業の計画変更では農民の十分な同意のないまま進められようとするなど、重大な人権侵害がある」として調査を申し立てていました。
 10日に熊本空港に下り立った日弁連の8名と県弁護士会の4名の弁護士さんは、まず球磨川下流域の荒瀬、瀬戸石両ダムを視察。人吉到着後、午後は市内の旅館、観光、漁業関係者や水害常襲地帯の住民からの聞き取り調査をしました。市民からは、昭和40年の水害は市房ダムからの放流によるものである、との指摘が多く出されました。
 11日は、五木村の現状を知るために、同村役場で西村久徳村長ら村関係者5名と1時間にわたって会談しました。委員たちからは、「川辺川ダム建設の見直しの声が上がっているが、村としてはどう受け止めているのか」など、次々に率直な質問が出されました。
 西村村長は、ダム計画発表以来29年にも及ぶ苦難の経緯とその心情を力を込めて話され、「現在では、ダム建設を前提として、村づくりに取り組まざるを得ない」と語られました。
 その後、上荒地の五木ダム建設予定地、頭地と高野代替地、相良村の川辺川ダム建設予定地、市房ダムを調査し、多良木町で利水事業関係農家から聞き取り調査をしました。
 最終日の12日は、建設省川辺川工事事務所、川辺川土地改良事業組合事務所を訪問し、推進側から事情説明を受けました。今回の調査結果は、長良川河口堰をはじめ、全国の河川開発問題の一例として、10月に高知県で開催される日弁連の人権シンポジウムで中間報告される予定です。

高原(たかんばる)台地の茶畑(1994年 手渡す会撮影)

川辺川から引かれた農業用水路。1994年の大渇水でも豊かな流れです (1994年 手渡す会撮影)

手渡す会・2月~6月の出来事

2/15  フォーラム「川と開発を考える」(東京)に参加。ダニエル・ビアード米開墾局総裁に、川辺川ダム問題を直訴する。
3/5   「ダム問題を考える市民大会」開催 文化センター 200名参加地質学者・生越忠氏講演「川辺川ダムは安全か?」
3/11~ 熊本県弁護士会の公害対策環境保全委員会(竹中敏彦委員長)川辺川ダム問題を現地調査(第1回目)
3/12  ユネスコ市民大学「身近な環境と自然保護」講座で、川辺川流域の自然観察会30名参加
4/4~  熊本県弁護士会、川辺川ダム問題を現地調査(第2回目)
5/30  「川辺川ダム建設見直しに関する意見書採択を求める陳情書」を、新人吉市議会の竹田勝議長に提出
6/9   市民有志14名が、川辺川ダム建設見直しを人吉市議会に陳情
6/10~日本弁護士連合会が川辺川ダム問題を現地調査
◇去る4月の統一地方選挙で、人吉市議会議員の顔ぶれも大幅に変わりました。「手渡す会」では、早速、新しい市議会にダム見直しの陳情書を提出しました。これからも清流球磨川・川辺川を未来に手渡すために、川辺川ダム建設の見直しを求めて、元気一杯活動いたしますので、ご支援をよろしくお願いします。

会計報告(95、2、16~95、5、15)

収入の部      金額       備考 
繰越金      303,532 
年会費・カンパ 523,392 グッズの売上、雑収入等も含む 
合計       826,924
支出の部      金額       備考 
郵送費       9,280 資料発送など 
紙代       36,680 署名用紙、ニュース、ビラ、資料など  
事務用品費   13,444 封筒、文具、印刷外注費など  
事務所維持費 304,359 家賃、電気、電話、コピー機、印刷機、水道など 
その他      28,284 器材借用費ほか  
合計       392,047 
 (収入)    (支出) 
826,924-392,047=434,877円
◇1ケ月に、これくらいのお金がハウス(事務所維持)にかかっています!
 家賃4万円、電気5千~1万円、電話1万~2万円、コピー1万~2万、水道700円、印刷機維持費1万円  合計7万5千円~10万円
◇会員の皆様、協力者の皆様、市民の皆様のご協力により、黒字会計となりました。この資金を元にして、より一層の活動を計画しております。今回、年会費(1000円)とカンパの郵便振り込み用紙を同封させて頂きました。ご意見・ご要望を、ぜひ通信欄にお書き添えいただければ幸いです。

「硬いが、もろく崩壊の恐れ」生越博士川辺川ダムサイト予定地を指摘

 阪神大震災による新交通システム崩壊を予言したとして注目を集めている、地質学者の生越忠(おごせすなお)氏の「川辺川ダムは安全か?」講演会が、3月5日、人吉文化センターで開催されました。生越先生は、昨年6月に人吉を訪れ、川辺川ダム建設予定地などを視察・調査しており、地質面や地震との関連から、次のようにダムの安全性を語られました。
 「川辺川の岩盤自体は硬いが、地殻変動で割れ目が多く、その割れ目に粒状の粘土が詰まっているものがかなりあった。これが水につかると粘土が流れ出し、すき間になる。例えるなら積み木と一緒で、ひとつひとつは硬いが、もろさがある。
 ダム予定地の四万十層は、土木関係者が厄介がるほど、ひび割れが多くすぐ崩れる。仮に大地震が起き、ダム本体が崩れなくても、ダム湖周辺の山は水により崩れやすく、崩れたら水がダムを越えて流れ出す可能性もある。
 地震が起きると岩盤に強い力がかかる。もしダムの右岸と左岸に地質の違いがあるとコンクリートはねじれる。川筋は周囲の山に比べ震度はより高くなる。ダムの調査はよほど慎重にやらなくてはいけない。」

「川辺川ダムは安全か?」で講演する生越忠氏(1995.3.5 人吉文化センター 緒方撮影)

くま川ハウス開設1周年、「手渡す会」創立2周年
総会を7月23日(日)開催します!

 この人吉球磨地方をとりまき、つらぬく山・川・海の自然の行くすえと、そこで生活する私たちの行くすえとに関心のある人達が、だれでも気軽に立ち寄り、集い、話をし、大いに楽しむことができる場所を作りたい…。そんな願いを込めて、「くま川ハウス」を開設したのが昨年の5月でした。
 この間、多くの皆様のご協力を得る事ができ、このたび1周年を迎える事ができました。これまで、多くのイベントなどを開く事ができ、また資金面でも毎月12万円あまりの定額カンパ(ハウス応援団)をたくさんの方からいただきました。また、月曜日の「手渡す会」定例会をはじめ、いろんな会合も盛んに行われるようになりました。
    日  月  火  水  木  金  土
午前      プリンの会   三味線教室  
午後           EM野菜販売 
よる 定例会    水曜パブ 
◇定例会:手渡す会の活動についてのミーテイング。だれでも参加できます。あなたも是非のぞいてみてください。8時ごろから。
◇プリンの会、EM野菜販売:別紙「プリンの会通信」を御覧ください。
◇水曜パブ:ビールでも飲みながら、川やいろんな事について語ろう!だれでも参加できます。7時すぎから。
 上の表の空いているところは、「くまハウス」設立の趣旨に賛同される方ならだれでも、自由にご利用できます。(ご利用される方は、ハウスまたは担当スタッフ佐藤TEL24-5631までどうぞ)仲間の輪を広げましょう。
 また、今年8月8日で、「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」も2周年を迎えます。ハウス1周年と、手渡す会2周年の記念もかねて、総会および納涼パーテイーを下記のように計画しました。ご出席できない方への委任状や、出欠確認の葉書などを入れなければならないところですが、正直な話、経費節減のため省略させていただきました。ご出席できない方も、お手紙、FAXなどでメッセージをいただければ幸いです。おおいに飲み、語りましょう!

◆ハウス開設1周年・手渡す会2周年 総会&納涼パーテイー  
とき  7月23日(日)午後7時30分~  
ところ 青井神社 参集殿  
なかみ ・経過報告 ・意見交換 ・ビアパーテイー(会費1000円)

五木の風景 1994年 手渡す会撮影

編集後記

 私たちの運動も、8月で3年目に突入しますが、「もうダムは出来よるのに、なんばすっとか」というような声もまだ耳にします。まだ、ダム本体工事には手がつけられていません。現在7割近くの工事が終わったダム取り付け道路が完成して時点で、ダム本体の必要性を再検討すべきだ、というのが私たちの考えで、ただ、やみくもに反対しているのではないはずです。◇「かわうそ」も10号を発行する事ができました。今回は投稿を2ページ取り入れ、活字も5%大きくしました。◇最近、野坂建設大臣の「長良川河口堰の運用開始」と、青島都知事の「世界都市博中止」という、好対象の2つの出来事がありました。社会は大きく変わりつつあります。大きく構えて、未来のために頑張りましょう。(N.O.)