熊本県人吉・球磨の市民グループ:通称「手渡す会」

5/13衆議院決算行政監視委員会での質疑メモ

質問日:2024年5月13日
委員会:決算行政監視委員会 第4分科会(国土交通省)
質問者:山崎誠議員

川辺川ダム問題についての質疑メモ

※以下は正式な記録ではなく、当団体が速記メモしたものです。

【山崎議員】

先の内閣委員会でも質問させていただいた。川辺川ダムについて、令和2年7月球磨川豪雨災害を受けて新たな河川整備計画が策定されて、流水型の川辺川ダムを柱とする治水対策が進んでいる。

ただ、被災者を含む地域住民、市民グループのみなさんからは豪雨災害の検証が杜撰であり、必要な対策が実施されていない、川辺川ダムありきですべて進められているのではないかという根強い不安や懸念、疑問の声が出ている。本日もこの件、地元の声に基づいて質したい。

 

<豪雨災害犠牲者に関する市民調査結果について把握しているか>

【山崎議員】

まず1点。豪雨災害犠牲者に関する市民の皆さんが調査した詳細な調査結果がある。それぞれ内水氾濫のメカニズム、避難ルート、被災経過の状況などが明らかになっている。その調査はこうした本にもまとめられており、嘉田由紀子参議院議員を中心に50人の溺死者の調査を丹念にされて、どうして命を落としてしまったのか、洪水の様子が詳細にまとめられている。私はこうしたレポート、調査をぜひ河川整備計画のベースにすべきと考えている。この調査、市民の調査について国交省はどう把握しているのか、どう評価しているのかお聞きしたい。大臣に。

 

  • 【斎藤国交大臣】

令和2年7月豪雨による球磨川流域での氾濫について、地元の方が調査を実施しその結果をとりまとめ、出版物などとして公表していることは国交省としても承知している。その中で、支川の山田川や万江川の氾濫水が人吉市市街地で局所的に集まり、急激な増水や激しい流れを引き起こし、人命が奪われたことなどが整理されていると認識している。

発災後、九州地方整備局ではすみやかに熊本県とともに流域内の12市町村長から構成される、令和2年7月球磨川豪雨災害検証委員会において、氾濫現象の解析や洪水流量の推定などを行った。そのための基礎情報として、水位計やカメラ映像、沿線住民の証言、氾濫水の痕跡等について、国や県が保有するものに加え、市町村からも提供いただき、地図上に時系列で浸水状況を整理するとともに、洪水で亡くなられた方の状況なども把握した。また本川支川一体となった河川の水位計算や氾濫シミュレーションを数式解析を用いて行い、整理把握した基礎情報と照らし合わせることで現象の再現性について確認した。

こうした検証結果については、球磨川水系河川計画の策定にあたって活用する際、球磨川水系学識者懇談会において、改めて専門的な観点から確認をいただいている。

このように客観的、技術的に令和2年7月豪雨の検証を進めてきているが、委員ご指摘の調査を実施された地元の方には、この検証結果について十分にご理解いただけてない点があると認識しているので、引き続き丁寧に説明に努めてまいる。

【山崎議員】

申し訳ないが、それは分かっている。それと、こういう調査があって。今、大臣もお認めになった。齟齬がある。大いに齟齬がある。地元の皆さんは丹念に100人以上にヒアリングして、2000以上の写真や映像データを分析している。現場の事実はここに詰まっている。それと、みなさんが開いているその調査のデータと、齟齬があるから、それは机上で、みなさんが専門家と称しているみなさんの分析と、どっちが正しいか。それをきちっと検証してもらいたいというのが、現場の声。大臣も今、齟齬があるとお認めである。ぜひもう一回、1つ1つこの検証結果をベースにしていただきたい。もう1回見直してほしい、それが要望。

 

 

<山田川、万江川、川内川などの支流氾濫とバックウォーター>

【山崎議員】

具体的に、山田川、万江川、川内川など支流の氾濫の発生のメカニズムについて、この調査からもさまざまなことが言われている。時間がないので、山田川や万江川の事例がたくさんある。国交省が出している事実が誤っている。それが誤っていると具体的に示される事実がたくさんある。

例えば資料の1。見ていただくと、支流を襲った豪雨ですべての支流が一斉に氾濫している。国交省の説明は「概ねバックウォーターが原因」「バックウォーターが支配的な要因」という説明をずっと繰り返している。しかしながら、地元の分析を見れば、バックウォーターだけではない、バックウォーターが支配的とは言えない氾濫の様子が明らか。合流点からの距離だとか、水流の向きだとか、水量だとか、水の勢いだとか、そういう検証を1つ1つやっていくと、バックウォーターだけで全部説明しようとするのは無理。

国交省、どういうふうに分析して、国交省はバックウォーター以外の要因についてはどういうふうに把握しているのか教えて下さい。

 

  • 【広瀬水管理国土保全局長(国交省)】

本川の水位が高いことで、支川の洪水が合流しづらくなる、いわゆるバックウォーター現象が本川に合流する支川の下流部で卓越していたということで、支配的であったと説明させていただいている。一方で、委員ご指摘のように、川内川の支川においては、このバックウォーター現象に加えて、上流域での大量の雨による河川の増水であったり、いわゆるじゅこうりゅうというものあったりとか、土砂の埋塞によって氾濫が生じたことは、これは熊本県の調査でも明らかになっているし、私たちも懇談会等で検証させていただいている。

【山崎議員】

今、重要な指摘があった。国交省にはバックウォーター以外の理由、分析、その具体的な内容を明示した行政文書をこの委員会に提出いただきたいと要望します。委員長、取り計らいお願いします。

 

【委員長】

理事会で協議する。

 

 

<第四橋梁ダム化についてどう把握しているか>

【山崎議員】

次、川辺川の合流点より上流で、大きな洪水が発生していないのに第四橋梁がダム化してそれ以前に洪水が発生するという地元のみなさんの声が上がっている。その発生状況を見ると、破壊力のある鉄砲水が発生した痕跡がある。資料2を見ていただくと、球磨川の第四橋梁がダム化したために水がせき止められて氾濫しているという様子が、この分析結果から明らかになっている。この様子を地元のみなさんはさまざまな検証して指摘をしているが、国交省がなかなか認めようとしない。

国交省は第四橋梁ダム化について、どのように把握しているか。

 

  • 【広瀬水管理国土保全局長(国交省)】

お答えする。7月豪雨の際に、球磨川第四橋梁がダム化し水圧がかかったことで橋梁の流失に至り、下流に流れる流量が一気に上昇したのではないかというご指摘だったと思う

仮にそうした現象が発生したら、下流に急激な水位現象が起きるのが一般的であるが、球磨川第四橋梁の下流4.7㎞にある水位計の観測データでは、そういた水位変化は観測しておらず、下流に水位上昇を伴うような現象が発生した可能性は低いと認識している。

このような国交省の見解については、球磨川水系河川整備計画策定にあたり、学識者懇談会で示しているほか、水位計データも八代河川国道事務所HPで公開している。なお、人吉市街地の氾濫域の広がりや浸水深については、数値解析を用いて、河川の水位や氾濫シミュレーションを行い、整理、把握した基礎情報と照らし合わせることで現象の再現性についても確認している。

 

【委員長】

先ほど資料請求についてあったが、政府としてしかるべき措置をとっていただきたいと思う。

 

 

<人吉大橋の危機管理型水位計データについて>

【山崎議員】

今お話にあった、水位計のデータを基にしてダム化がないと主張しているが、1つはこの水位計がちゃんと機能しているのかと、何度も疑問がわいている。HPでも説明が追加されていて、私からの質問があったのでそのことかもしれないが、資料3をみていただくと、いかにも水位計壊れている。水位計の測定する先端の機器が本当に取れている。写真がもっと明確になっていれば分かるが、どう見てもそう。地元のみなさんはこういう状況を見て、ダム化のことをもっとちゃんと分析してほしい、検証してもらいたいと言っている。この測定記録をもう一回、水害直後に機器がどうだったのか。14日の写真は出てくるが、10日も経ってからの写真ではなく、この直後の様子を教えていただきたい。

これもぜひ国交省、必要な資料を作って提出をいただきたい。直後、この水位計が機能していたかどうか。

異常値が出てもそのまま測定記録として出す、と、注意書きまで付いている。本当に危機管理型水位計が正しく動作しているかどうかは、いまだに明確になっていないと思う。それと合わせて、第四橋梁のダム化も改めて地元の皆さんの主張にも耳を傾けて、きちっと検証すべき。資料2にもあることが発生しているのは事実なので、ぜひ取り組んでいただきたいと強く要望させてもらう。

水位計データも管理記録、当日の水位計の様子がわかる資料を出していただきたい。

 

 

<川辺川ダムの洪水抑止効果について>

【山崎議員】

さまざまなメカニズムに疑問が呈されているが、国交省との議論の中では、川辺川ダムができればこうした洪水が発生しない、抑制効果が高い、の一辺倒。

大臣にこれは聞いていただきたい。ダムが効果を発揮するのは、あくまでもダム上流部に特定の雨が降ったときのみ。2020年豪雨災害の時、雨量が多かったのは、ダム上流部分ではなく、はるか下流の球磨川中流域、その支流、あるいは球磨川の本流上流部である。短時間に激しい雨が降って、谷や山が崩れて、そして支流がいち早く氾濫した。国交省の、川辺川ダムができれば氾濫を防ぐことができという主張の前提は、この現場の事実を無視している。

これは重要な問題だと思う。川辺川ダムありきではなく、住民の命を守るために何が必要かという視点で、原点に立ち戻って現場の事実を踏まえた検証を進めるべき。地元のみなさんは、国交省が進めている検証は机上の空論だ、数値計算に過ぎないと言っている。

気候危機の影響で、毎年のように各地で記録的な豪雨が観測されるようになっている。球磨川でも、今回の豪雨災害を超える豪雨がまた発生するかもしれない。そのたびに基本高水を高く改訂して、ダムを開発する。それで大丈夫なんだと。

これは、新しい流域治水という考え方を最大限活用して、省庁横断して、例えば森林整備やその他の施策も含めて治水対策をやるべきという考え方と、私は一致していないと思う。ダムの治水効果は限定的というのは、国際的に共通認識が図られている。

大臣にお聞きする。日本の河川行政は転換期に来ていると思う。川辺川ダム計画を見てもそのように痛感するがいかが。

 

  • 【斎藤国交大臣】

流域全体で川の洪水管理、調整を行っていくという考え方は、おっしゃる通り。その上でダムだけで解決するとは我々も思っていない。ダムはその中の一部の機能を果たすものだと思っている。その上で、川辺川ダムについては、球磨川水害からできた有識者の委員会、専門家委員会で、これはあらゆる方面の方に集まってもらった委員会だが、これまで得られたいろいろなデータやまた数値計算、地域の状況など見ながら総合的に勘案しての結論である。この点はぜひご理解いただきたい。

今回、今山崎議員がおっしゃるように、支川の氾濫が溺死の原因であった。その通りだが、その支川の氾濫は、やはり本川の水位が高ければ支川から水が本川に流れにくくなって支川の水位が高くなる。これがバックウォーター現象であるが、こういうことに大きな原因がある、というのが、専門家の委員が検討した、あらゆるデータを使いながら検討された結果。その結果に基づいて施策をし、地元のみなさん、熊本県のみなさんにもご説明しご理解いただいている。

 

【山崎議員】

その最後の説明が問題である。バックウォーターだということをまた残念ながら強調されている。バックウォーターは確かに一部原因なっているかもしれないが、今回の豪雨災害の起こり方を見れば、バックウォーターだけじゃない。もっと重要なことを指摘したつもりだが、川辺川ダムがあればバックウォーターが防げるかというと、そうではない。雨の降り方が違う。それはどうですか。本当にバックウォーターはダムができれば、ダムの上流の雨を抑えるだけ。それで今回のそれで今回の氾濫をおさえられるのか。バックウォーターを抑えることができるのか。

 

  • 【斎藤国交大臣】

今回の支川の氾濫がすべてバックウォーター100%とは申し上げているつもりはない。先ほど局長が申し上げたが、バックウォーターが主な原因である、主要な部分を占めている。これが専門家委員会の結論。本川の水位が高いことで支川から来たことが流れ込まない、これがバックウォーター。本川の水位が下がれば支川の水も流れやすくなって、支川の氾濫が起きなくなる。これが専門家の報告書の趣旨だと思っている。

 

【山崎議員】

繰り返しである。大臣。ぜひ詳細な分析、現場の分析があるので、みなさんの専門家グループの見解もわかるが、それがバックウォーターバックウォーターと言っている。川辺川ダム計画を継続したいがために、バックウォーターを理由にしてそれを抑える計画なんだと、その一辺倒で説明している。地元で。それでみなさん非常に怒っている。もう一回、示している調査、現場のみなさんとの議論を深めていただきたい。そのうえで大臣が言っていることが本当に有効なのか、もう1回検証してもらいたい。

 

<河川整備計画策定プロセスへの住民の声の反映>

【山崎議員】

例えば河川整備計画策定でどのくらい住民の声が反映されたのか。地元で確認した。説明会は一度も開催されず、公聴会を5日間で12か所、実際に公述人が申し込んだのは10か所。公述人は説明も受けないで意見を言わないといけない。意見を言っても一方通行で、なんの返事も受けない。平日夜、土日に開催してほしいとリクエストしているのに無視される。

大臣、地元のみなさんは真摯にいろんな現象を分析して共有したいと願っている。でも国交省は、地元の意見を十分に聞いていない。ぜひ十分に聞くよう指示していただけないか。

 

  • 【斎藤国交大臣】

当然、住民のみなさんの意見は当然、大変重要。球磨川においても、河川整備計画策定にあたり、八代市や球磨村をはじめ10か所で公聴会を開催。またパブリックコメントも併せて実施し、国、県のHPに開設した特設ページや、沿線関係機関の庁舎31か所に設置した意見箱で関係住民の方からご意見をいただいている。いただいたご意見はすべてHPで公表するとともに、意見に対する河川管理者の取り組み状況と考え方や、河川整備計画への反映案について学識者懇談会でお示しし、意見をお聞きした上で河川整備計画を策定した。

 

【山崎議員】

時間が無くなってきたのでまた続けたいが、もう1回大臣、地元の皆さんと丁寧に議論をし、現実に起こったことをもう1回検証すると言ってもらえないか。

 

  • 【斎藤国交大臣】

私も熊本県、球磨川流域を訪問し、沿線市町村のすべての首長の方と懇談し、ご意見をお聞きしている。これからもその努力を続けたいと思う。

 

【山崎議員】

首長だけじゃなくて、地元のみなさん本当に心配している。被災者でもある。そういう方々の声を聞く力を発揮して下さい。心からお願いし、残部の質問はまたの機会にさせていただく。ありがとうございました。

 

以上